『この惑星』の連載『アーティスト・アイズ』の記事がアップされた。ぜひご笑覧ください。URLは
http://www.konohoshi.jp/index.html 今月は松本人志監督の『しんぼる』を取り上げた。『しんぼる』は封切られたときから取り上げようかと思っていたのだが、何回目に取り上げるかは少し悩んだ。
『アーティスト・アイズ』はアート関係のイベントを取り上げることになっている。私の興味としては古典や近代ではなく、新しいものを取り上げたい。古典や近代芸術はわざわざ私が取り上げなくとも、ふさわしい研究者や評論家がいる。『アーティストアイズ』というタイトルのとおり、現役のアーティストが同時代のアーティストの作品を見て感じたことを書くというのがコンセプトだ。こういったコンセプトで書く以上、私としてはたとえ反発を感じたとしても何かを共有している感じが持てるものを取り上げたいのだ。
『しんぼる』は絶対に取り上げようと思っていたのだが、一応アート情報ということになっているので、現代美術か実験映画かダンスか演劇を2、3本取上げた後に、と思っていた。ただし、封切りが終わってしまっては情報コーナーとしての役割を果たさないので、ギリギリ3回目かなと予定していた。
今月取上げようかと思っていたのは森美術館で開かれている『アイ・ウェイウェイ展 ―何に因って?』だったのだが、いってみてがっかりした。2回目にして他人の批判を書いてもしょうがないので、他の対象を探すことにした。いろいろ探したがピンと来るものがなく、となれば2回目だが『しんぼる』しかない。
このあたりが難しいところなのだが、レビューを書いて読者が見に行ける程度の期間開催されているイベントとなると、新しいといってもある程度評価の固定したアートが多くなる。『アイ・ウェイウェイ展』はまさにそのつまらなさが出ていた。こういってはわるいが欧米の美術市場の支配下にあるような印象だった。
少し前に、対象を選ぶ苦労をこのブログに書いたが、ちょうど『アイ・ウェイウェイ展』を観たあとだった。あの記事を読み『この惑星』の大島編集長から、読者が見に行ける対象にこだわらなくてもいいという電話を貰った。だが、この基準によって生まれる苦労は現在のアートのいろいろな面を考えるきっかけとなるので、私自身は無駄な努力とは思っていない。
ちょっと整理してみよう。
1.新しいアートを取上げる。
2.ファインアートを中心に取上げる。
3.可能な限り、レビューを読んだあと読者が鑑賞できる期間があるイベントを取上げる。
1の「新しい」ということに関して言えば、作られた時代が古いもの、現在生きていても近代に分類されるアーティストの作品は避ける。問題は現在活躍中のアーティストであれば新しいわけではないのだが、その基準となると私の主観となる。つまり、この選定では私の見方が問われることになる。
2のファインアートということは、実はかなりやっかいだ。最近の現代美術はサブカルチャーのお尻を追っかけているところがある。また、fine(品質の優れた、純粋な、技術の優れた)という言葉は近・現代の芸術運動の標的でもあった。ファインアートという言葉自体かなり曖昧であり、その言葉で芸術の本質が衝けるのかという問題がある。それでいながら、欧米ならきちんと市場がある。つまり、ファインアートを中心にといった基準を立てるということは、ファインアートとは何か、それに意味があるのか、それを否定したら何が本質的に重要なことなのか、という堂々巡りの問いを抱え込んで執筆を続けるということになる。
3期間の問題は現在のアートの制度をかなりはっきりと映し出す。評価、興行、観客の問題、会場の問題などなど。
この3つの基準は時々破りながらも、一応守って行こうと思う。守ることで、現在のアートシーンのいろいろな問題がが浮かび上がってくる。そうしたら、このブログに書いていくつもりだ。