コンクリ打ちと呼ばれる仕事があった。
鉄筋コンクリートのビルを建てるとき、鉄筋屋さんが壁を鉄筋で組み、大工さんがそれを板で囲み壁を作る。さらに天井になる部分に板を張る。板は下の階の床との間を何本ものジャッキ状の太いパイプで止める。その板の上に鉄筋屋さんがさらに鉄筋を組む。上の階の床になる。
大工さんが組んだ板は型枠と呼ばれ、型枠で囲まれた中に鉄筋が組まれている。その中にコンクリートを流し込んでいくのがコンクリ打ちだ。コンクリ打ちはポンプ車が来て、オペさん(オペレーター)がホースの先端をもって、壁の隙間や床にコンクリを流し込んで行く。俺たち土工はバイブレーターや木槌やスコップやカッパギと呼ばれる道具を持って、コンクリがきれいに流れ込むように振動を加えたり、壁の板を叩いたり、コンクリ均等にを引き伸ばしたりする。カッパギとは算木と板で作ったT字状の道具で、どろっとしたコンクリの塊をそれで伸ばすのだ。
床部分はスラブと呼ばれる。スラブにコンクリを流し込むとき、奇妙な感覚に襲われた。何もないところにコンクリートが流れてきて、それを伸ばそうカッパギを持ってコンクリをひっぱる。そのとき足にもコンクリが流れてきて、圧力がかかる。ところで足元は鉄筋が組んであり、往々にしてその隙間に足首を入れているので自由が利かない。自由が利かないところに、コンクリという流動体の圧力がかかり、さらに上体はコンクリを引っ張ろうと力を入れる。体全体がバランスを崩しそうになる。
何度か、コンクリ打ちの夢を見たことがある。夢の中でも、体はバランスを崩し、足はとられ足mことからずるずると流される感覚に襲われ、はっと起きたことが何度かある。
足場から落ちる夢と、コンクリ打ちで足がとられる夢、それが土方時代の思い出だ。
きょう永田町が液状化した。