写真家のスペンサー・チュニックが、フランスのぶどう園で700人の男女をオールヌードで撮影したというニュースだ。ボカシが入っていたが、壮観だった。画面には、「あくまで芸術です」というテロップが、しつこいほど入った。まあ、テレビだからな。場合によっては苦情の電話もガンガンかかるだろうなあ。
できあがった写真は、ぜひ見てみたい。できるだけでかい画面でプリントしたらすごいだろうなあ。壁一面とか。いやらしさはまったくないだろうなあ。
裸、あるいは性というのは不思議なものだ。学生時代、銭湯が好きだった。何が好きだったかというと、その空間が好きだった。それなりに広くて、お湯や水があって、たくさんの人が何の恥じらいもなく裸でいる。いくら同性ばかりだとはいえ、街中や職場で裸になれといわれたら抵抗があるはずだ。だが、銭湯ではそれがない。銭湯だから何の恥じらいもなくなる、そのスイッチの切り替わり具合が面白い。これが文化というものの不思議なところだろうか。
いうまでもなく人間は裸で生まれてきたし、大人になっても本来自分に備わっているものは裸の体しかない。そのくせ文明社会では裸は猥褻視される。場合によっては時の大臣に「最低の人間だ」といわれ、あとから訂正されたりする。
人間本来の姿が、文明社会では猥褻あるいは野蛮なものとみなされ、それでいて、より文化的な芸術だと許される。このパラドクス。人間と人間が作り上げた文明は、矛盾の塊だ。
それにしても、スペンサー・チュニックの写真みたいなあ。